第24回中原中也賞が井戸川射子さんの『する、されるユートピア』に決定しました
概要
第24回「中原中也賞」では、平成29年12月1日から平成30年11月30日までに刊行された現代詩の詩集218点が寄せられました。
平成31年2月9日、最終選考作品として選ばれた6作品を対象に、山口市湯田温泉の湯田温泉ユウベルホテル松政で選考会を開催しました。審議の結果、第24回中原中也賞は、井戸川射子さんの『する、されるユートピア』(私家版)に決定しました。
受賞者には、正賞として中也と親交のあった彫刻家高田博厚(1900-1987)制作中原中也ブロンズ像と、副賞として100万円を贈呈します。第24回中原中也賞の贈呈式は4月29日(月曜日・祝日)に山口市で行い、あわせて赤坂真理氏(作家)による記念講演を開催いたします。
受賞作品
『する、されるユートピア』(私家版)
受賞者
井戸川射子(いどがわいこ)
受賞のコメント
会話は完全にはできないこと、自分の体さえ思い通りにならず、思い出には手が届かないこと、周りのみんなが、たぶん同じくらいに悲しくいること、それを形にできるものがわたしにとっては詩でした。
はじめて自分で小さな詩集にまとめ、大好きな祖父が愛読していた中原中也を記念した賞をいただき、今とてもしあわせです。
いつもいちばん近い言葉を選ぶしかなくても、詩があって、それで良かったです。身の引き締まる思いです。この度はありがとうございました。
選考経過
公募、推薦の詩集218点について本年1月に開催された推薦会の検討の結果、井戸川射子『する、されるユートピア』、岩倉文也『傾いた夜空の下で』、倉石信乃『使い』、小縞山いう『リリ毛』、殿塚友美『fey』、水下暢也『忘失について』の6冊が選ばれ、本日の選考会の対象とされた。
今回は荒川洋治委員が病気のため、選考会には候補作6作についての意見を書面でいただいて、討議に参加というかたちを取った。最終的に残された詩集は、井戸川射子『する、されるユートピア』、岩倉文也『傾いた夜の下で』、水下暢也『忘失について』の3作であった。
どの作品も力があったが、討議に時間が割かれたのは、岩倉文也『傾いた夜空の下で』が、非定型の口語自由詩と定型詩である短歌作品を同列に収録していることについてであった。岩倉氏の詩集は短歌を武器にしているが、定型詩と非定型詩との間の緊張関係があることが望まれた。
水下暢也『忘失について』は、前半の難読漢字を含む作品よりも、後半の作品数点が秀逸。物語の不思議さが際立った。
討議が最も活発になったのは、井戸川射子『する、されるユートピア』が話題になったときであった。母の死という一貫したテーマを持ちながら、収録されたどの作品においてもそれを表面に出していない。悲しみの抒情にもたれず、むしろ機嫌よく言葉を観察している力量は、素晴らしい。「手のひらは強く握っても/すき間は絶対なくならない」など、作者特有の鋭い言葉のセンスは新鮮。今回の中原中也賞に最もふさわしい。
最終選考作品(著者名五十音順)
著者 | 詩集タイトル | 出版社 |
---|---|---|
井戸川射子 | する、されるユートピア | 私家版 |
岩倉文也 | 傾いた夜空の下で | 青土社 |
倉石信乃 | 使い | 思潮社 |
小縞山いう | リリ毛 | 思潮社 |
殿塚友美 | fey | 私家版 |
水下暢也 | 忘失について | 思潮社 |
選考委員(五十音順)
氏名 | 肩書き |
---|---|
荒川洋治 | 現代詩作家 |
井坂洋子 | 詩人 |
佐々木幹郎 | 詩人 |
高橋源一郎 | 作家・明治学院大学教授 |
蜂飼耳 | 詩人 |
応募状況(一般応募作品209冊)
全国42都道府県より応募がありました。山口県内からは5人(うち山口市内3作品)。
最も応募が多かったのは、東京都の45人でした。
応募者は198人、その内訳は、男性が104人、女性が94人でした。
年代別 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代 | 80代以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
人数 | 3人 | 17人 | 31人 | 37人 | 28人 | 53人 | 21人 | 8人 |
関連書類※ダウンロードします。
報道資料1 [PDFファイル/124KB]
報道資料2 [PDFファイル/97KB]
報道資料3 [PDFファイル/107KB]
報道資料4 [PDFファイル/72KB]
報道資料5 [PDFファイル/184KB]
報道資料6 [PDFファイル/137KB]
関連リンク
中原中也についての関連リンク
中原中也記念館ホームページ<外部リンク>