第16回中原中也賞が辺見庸さんの『生首』に決定しました
概要
第16回中原中也賞には、平成21年12月1日から平成22年11月30日までに刊行された現代詩の詩集202点(うち推薦詩集6点)が寄せられました。平成23年2月12日、応募作品の中から最終選考作品として選ばれた7作品を対象に、山口市湯田温泉の旅館西村屋で選考会を開催し、審議の結果、第16回中原中也賞は辺見庸さんの『生首』(毎日新聞社)に決定しました。
受賞作品
『生首』(毎日新聞社)
受賞者
辺見庸(へんみよう)
略歴
1944年生、66歳〈受賞時〉
早稲田大学文学部卒業
1991年 『自動起床装置』(文藝春秋)〔第105回芥川龍之介賞受賞〕
1994年 『もの食う人びと』(共同通信社)〔講談社ノンフィクション賞受賞〕
2007年 辺見庸コレクション第1巻『記憶と沈黙』(毎日新聞社)
受賞のコメント
高名な夭逝詩人の名前を冠した賞を、流連荒亡をかさね、彼よりすでに二倍以上生きて、ここまで老いさらばえた私が頂戴するというのは、なにか道理がたたないような、筋がとおらないような想いがいたします。いつわらざる内心の声は「よせやい!」でありますし、中也も同じヤジを天国から飛ばしていることでありましょう。ただ、生きているとこんなこともあるのだな、という引き攣ったようなおどろきもなくはなく、今夜もまた埒もない詩をひとつこしらえようとおもったことです。言祝ぎ、言祝がれるのをきっぱりこばんだはずの詩集『生首』が言祝がれるとは、まことにこの世は面妖であります。
選考経過
公募、推薦の詩集202冊について本年1月に開催された推薦会の検討の結果、高橋正英『クレピト』、塚越祐佳『越境あたまゲキジョウ』、清中愛子『宮の前キャンプからの報告』、管啓次郎『Agend’Arsアジャンダルス』、高谷和幸『ヴェジタブル・パーティ』、陶原葵『明石、時、』、辺見庸『生首』の7冊が選ばれ、本日の選考会の対象とされた。
最終候補の7冊のうち、最後に残ったのは、ほぼ3冊だった。それは高谷和幸『ヴェジタブル・パーティ』、管啓次郎『Agend’Arsアジャンダルス』、そして、辺見庸『生首』である。高谷の詩集は、詩でしか可能にならないことばの連想やずれ、多義性、高度なユーモアが評価されたが、同時に、わたしたちの生きている世界への通路が見えないことが、不満として出された。また、管の詩集も、太古から人や動物や植物、光や風が現れてくる世界の起源に働いているエレメントを、いま、甦らそうとする壮大な展望が評価されたが、フレッシュな感覚を求める中也賞としては、保留せざるをえなかった。最後に辺見の詩集が、選考委員の支持を集めたのは、わたしたちが生きている世界のいまとここに、全存在をかけていることばの強度が並はずれていることだった。彼の詩には現代社会の腐敗し、機能不全に陥っている内臓が、鷲掴みされている臨場感がある。これまで作家、ジャーナリスト、エッセイストとして実績のある人が、詩の世界に新人として飛び込んでこられた。その意味を、わたしたちは重く受けとめたい、ということでも、選考委員の気持ちは一致した。
著者 | 詩集タイトル | 出版社 |
---|---|---|
高橋正英 | クレピト | ふらんす堂 |
塚越祐佳 | 越境あたまゲキジョウ | 思潮社 |
清中愛子 | 宮の前キャンプからの報告 | 私家版 |
管啓次郎 | Agend’Ars | 左右社 |
高谷和幸 | ヴェジタブル・パーティ | 思潮社 |
陶原葵 | 明石、時、 | 思潮社 |
辺見庸 | 生首 | 毎日新聞社 |
選考委員(五十音順)
氏名 | 肩書き |
---|---|
荒川洋治 | 現代詩作家 |
井坂洋子 | 詩人 |
北川透 | 詩人・梅光学院大学特任教授 |
佐々木幹郎 | 詩人 |
佐藤泰正 | 梅光学院大学客員教授 |
高橋源一郎 | 作家・明治学院大学教授 |
応募状況(一般応募作品196点)
全国38都道府県より、19歳から85歳までの194人から、196点の応募がありました。
最も応募が多かったのは東京都の28点で、山口県内からは3点(うち山口市内はなし)の応募がありました。
年代別 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代 | 80代 | 不詳 |
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人数 | 1人 | 19人 | 31人 | 29人 | 37人 | 51人 | 14人 | 4人 | 8人 |
関連リンク
中原中也についての関連リンク
中原中也記念館ホームページ<外部リンク>