第3回中原中也賞が宋敏鎬さんの『ブルックリン』に決定しました
概要
第3回中原中也賞は、平成8年12月1日から平成9年11月30日までに刊行された現代詩の詩集228点(うち推薦作品11点)が寄せられ、その中から最終選考作品として6作品を選び、2月21日、山口市内の旅館西村屋で選考会を開催、最終審議が行われました。審議の結果、第3回中原中也賞には、宋敏鎬さんの『ブルックリン』(青土社、1997年11月25日刊)が選ばれました。
受賞作品
『ブルックリン』(青土社)
受賞者
宋敏鎬(そんみんほ)
略歴
1963年生、34歳<受賞時>
心臓外科医。
1984年から1987年まで「菊屋」同人。
1997年、「ユリイカ」の新鋭詩人に選ばれる。
受賞のコメント
多くの作品の中から私の詩集が選ばれたことを感謝します。
この詩集は、1995年から1年間ブルックリンの病院で医師として働いた経験がきっかけとなってできたものです。
詩を書き始めたのは大学生の頃で、20代前半に数年間書いていましたが、医師になって以降は、しばらく遠ざかっていました。日本語でない世界で生活していて、日本語に対する愛がよみがえり、詩のいくつかの行が浮かんできました。
中原中也の父親は医師であり、息子である中也は、家業を継ぐことを望まれていたと思いますが、詩の世界で名をなしました。そのような中也の名を冠した賞を受けるのは、不思議な巡り合わせを感じます。
これからも、別の世界を探索していくつもりですが、今回の受賞で大きな励ましをいただき、背中を押してもらったような気持ちです。
講評
97年8月18日および1月18日の2回にわたり推薦委員会を開き、応募され推薦された228冊の詩集の中から6冊の詩集を選び、この6冊の詩集を本日の最終選考会の対象とした。
その結果、宋敏鎬(そんみんほ)さんの詩集『ブルックリン』に本年度の中原中也賞が授賞されることになった。
『ブルックリン』は、ニューヨークのブルックリンという地区をその生活のにおいを感じさせるような存在感を持って描き出した作品であり、 ここには、わが国の、伝統的な叙情性とは無縁ないわば、反叙情的、非叙情的な乾いた姿勢、日本語の表現への批評性、異国に滞在するマイノリティーの視点が認められ、こうした点を選考委員全員が、共通して高く評価された。
ただ、同時に、選考委員会では、日本語としての表現には多くの問題があるのではないか、また、異国ではない日常の生活の場を対象にした場合、この詩人は、どういう詩を書くのだろうか、という不安、危惧も表明されたが、結論的には、将来を 期待するに足る力量を持つ詩人であると認められたものである。
最終選考作品
著者 | 詩集タイトル | 出版社 |
---|---|---|
佐々木浩 | 象が死んだら | 書肆山田 |
貞久秀紀 | 空気集め | 思潮社 |
宋敏鎬 | ブルックリン | 青土社 |
藤倉英世 | 消滅のための火 | 紫陽社 |
大嶋賢利 | 維新 | 檸檬屋 |
竹内敏喜 | 翰 | 彼方社 |
選考委員(五十音順)
氏名 | 肩書き |
---|---|
荒川洋治 | 詩人、早稲田大学文学部講師 |
北川透 | 詩人、梅光女学院大学教授 |
佐々木幹郎 | 詩人 |
佐藤泰正 | 梅光女学院大学学長 |
中村稔 | 詩人、弁護士 |
吉田熈生 | 城西国際大学副学長 |
応募状況(一般応募作品217点)
全国43都道府県より、17歳から82歳までの211人から、217点の応募がありました。
最も応募が多かったのは東京都の52人で、 山口県内からは7人(うち山口市内3人)の応募がありました。
年代別 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代 | 80代 | 不詳 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
人数 | 5人 | 35人 | 39人 | 51人 | 38人 | 33人 | 12人 | 1人 | 3人 |
関連リンク
中原中也についての関連リンク
中原中也記念館ホームページ<外部リンク>