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市報2026年4月号 第31回中原中也賞

印刷ページ表示 更新日:2026年3月26日更新 <外部リンク>

受賞者決定

 中原中也賞は、日本の近代詩史に足跡を残した本市出身の詩人、中原中也の業績を永く顕彰することを目的に、新鮮な感覚を備えた優れた現代詩の詩集に贈る文学賞です。

 第31回となる中原中也賞は、2月に行われた選考会において、応募、推薦のあった267点の作品の中から、成清朔(なりきよさく)さんの『彼方(かなた)の幽霊(ゆうれい)』に決定しました。

 受賞者には、正賞として中原中也ブロンズ像と、副賞として100万円を贈呈します。また、4月29日(水・祝)に第31回中原中也賞の贈呈式と朝吹亮二(あさぶきりょうじ)氏(詩人、フランス文学)による記念講演を開催する予定です。

選考委員評

 本年1月に開催された推薦会での検討の結果、7冊が選ばれ、選考会の対象とされた。

 最終的な議論の対象となった詩集は丸山零(まるやまれい)『二つの引き出し』、成清朔『彼方の幽霊』だった。『二つの引き出し』は、自然物と主体との対比や距離を風景的に描いている。作品のほつれやほころびがむしろ詩集としての良さに通じているという意見やこの詩集の身体性にはAI時代への抵抗感も見られるという意見が出された。魅力のある作品は少なくないが観念的すぎるという指摘もあった。『彼方の幽霊』は、他の詩集にはないほどの緊張感や揺らぎを詩に捉えようとする試み、世界に対する疑念との向き合い方が評価された。「ゼロ年代詩」を想起させるという意見もあったが、それでもなお今を生きる個人の主体と身体を詩に導き入れようとしていることや葛藤が見て取れ、そこに評価が集まった。議論を重ねた結果、第31回中原中也賞は全員一致で成清朔『彼方の幽霊』に決定した。

受賞者コメント

 詩を書くということが、自分が生きることのすぐ側までやってきたのは、ここ数年のことでした。自分には見えないものが、必ずしもふれられないとは限らない、皮膚の下には骨があると指尖で知覚し、体の内を血液が流れていると脈にふれてたしかめるように、自分のなかにあるほんとうにふれられたらと、ずっと思っていました。「They」という詩を書いたそのときから、詩を書くことは自分にとってその指尖の感覚を澄ましていくことになったような気がします。

 中原中也の詩を読んでいると、心のうちにあるものを言葉へと分けるやさしさや美しさを感じ、中也にも詩のことばによって自分自身にふれるようなことがあったのではないかと思うのでした。「鏡の、やうな、澄んだ、心で、/私も、ありたい、ものです、な。」という二行は、だからこんなにも届くのだろうと。

成清朔さん

成清 朔

 1999年、生まれは海のちかく。2024年ごろ詩の投稿をはじめ、2025年11月、第一詩集『彼方の幽霊』を私家版で刊行。2026年に詩「日蔭の骨」が西脇順三郎賞新人賞奨励賞を受賞。同年、詩集『彼方の幽霊』が第31回中原中也賞を受賞。

​​受賞作品 『彼方の幽霊』所収 「Opaline」より

あかるさのなかでは曖昧な

張り詰めた肌を解いていくと

夜のからだはやわらかく

皮膚の下はあまりに正確で

クローゼットの幽霊は

見つけてもらいたい、と

慎ましやかに願う

膝というものがあるとしたら

ふたつくっつけたそこに

閉じた瞼を押し付けるようにして

ほんとうは

青くもない水のなかに

画面を伏せたスマートフォン

そこに写ったはずの姿を

想像しながら

彼方の幽霊

成清朔 『彼方の幽霊』(私家版)

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