樫の前自治会からの要望
令和7年9月16日提出
山口市内の上郷地区(仁保津)におきましては、一昨年6月30日から7月1日にかけての豪雨により、当自治会直近の茶屋川及び仁保津川合流地点の茶屋川樋門付近における河川の氾濫が起こり、市道走行中の車両が水没し運転者が亡くなるという痛ましい事故が発生し、当自治会では約9割もの家屋が床上及び床下浸水被害に遭った状況であります。
また、昨年も前年から丁度一年後に、河川氾濫が再発している状況であり、一昨年の悪夢が蘇った次第であります。
今年は、今のところ幸い被災に至ることはなかったものの、一昨年の要望書のとおり対策が早急にかつ確実に行われておれば、河川が氾濫することを防げたのではなかったかと悔やまれてなりません。
そこで、当自治会といたしましては、喫緊なる対策をお願いしたく、再度次に掲げる項目を地区要望とするものであります。
記
1 要望内容
(1)自動排水ポンプの設置
一昨年の要望書の一番に掲げた項目で、地区住民から最も強い要望のある自動排水ポンプの設置についてであります。
当自治会からの要望書に対する市から回答書では、「県に対しまして、早急に排水ポンプの設置に着手されるよう強く要望してまいります」とありますが、回答が無いことから後日、対策の進捗状況を催促したところ
〇一昨年11月に要望したが県から回答がもらえない
旨の回答であり、その後の進捗状況の回答も一切無い状況であります。
昨年、6月に茶屋川専用のハイドロポンプ(形式:HS60)を配備されたにもかかわらず、多々重なる要因「(3)以下に記載」によって河川の氾濫を招いたものと思料されるところであります。
今年においても、昨年の教訓が生かされていないことや、ハイドロポンプ1台及びポンプ車追加の性能では対処出来ない気象状況になっていることが伺われたところであります。
そこで、上記の状況を考慮して、是非自動排水ポンプの設置を再度お願いするものであります。
高性能及び多機能付の自動排水ポンプが設置されても、今後その性能を上回る災害が発生することは十分に考えられますし、それによって被災したとしても諦めの度合いが違うと思うところであります。
(2)茶屋川樋門以西及び以北の整備
一昨年の要望書の二番目と三番目(1)に掲げた項目で、茶屋川樋門以西及び以北の河川には汚泥が堆積し、北側南側及び東側西側それぞれの法面に樹木が繁茂している状態で、本来流れる水が中間で停滞し河川としての機能がなされていない状況でありました。
〇一昨年度予算での対策として、茶屋川樋門以西200mの浚渫のみで、それ以西及び以北は、来年度予算で行う
旨のところ、茶屋川樋門以西の浚渫と一部の樹木の伐採が実施されたことを確認いたしましたが、以北が未実施のままとなっている状況であります。
従いまして、毎年の予算組による継続整備の徹底をお願いするところであります。
(3)簡易水位計数値への早期対応と連携強化の徹底
一昨年の要望書の五番目に掲げた項目で、市からの回答書では「簡易水位計が設置され、豪雨時には水位情報がリアルタイムに確認出来るようになった」とありますが、
〇水位計のデータは最大で一時間遅れ、最短でも20分遅れ
〇時にはデータが反映されていない時間帯あり
の情報であり、データと実際の水位に誤差が生じている状況であります。
昨年の河川氾濫が生じた原因は、当方が現場確認中に市に対して茶屋川専用のハイドロポンプ車の要請を促すも、
〇「検討します」の回答であり、線状降水帯の発生による進路の予測判断ミス及び職員の現場派遣なしの目視確認がなされていないこと
その後、ハイドロポンプ車で排水作業中も1台では排水能力が足りないことから、更なるポンプ車の追加を要請するも、
〇「検討します」と、同様の回答で、机上で判断する者の対応の甘さと危機感の無さと担当職員による現場の状況判断遅れ、更に机上と現場の乖離の大きさがあること
〇ハイドロポンプ車及び通常ポンプ車の委託業者への待機依頼及び設置連絡等の遅れや設置から排水開始までの所要時間の把握がなされていないこと
〇高性能を謳ったハイドロポンプの性能でさえ、局地的短時間雨量に対応する排水能力が足りていないこと
また、市とハイドロポンプ車の委託業者との連携不足を感じたのは、
〇災害発生による緊急避難指示のサイレンが吹鳴されたにも関わらず、委託業者は「市からの指示待ち状態」の怠惰な対応であったこと
〇当方が委託業者に詰め寄り設置対応を催促し、ようやく移動開始に至ったこと
等が河川氾濫に繋がったと思料するところであります。
(4)職員の育成と危機管理体制の確立
大雨注意報から警報への移行に伴って、雨雲レーダーの解析や線状降水帯発生後の進路予想の情報等から、当方の素人でも判断出来得る「予測を見極める力」の教養を職員に行っていただきたいと思うところであります。
自然が相手ですので、必ずしも予測通りにはいかないこともありますが、最悪を予想するに越したことは無いと思うところであります。
また、職員の待機体制についてでありますが、今年も、線状降水帯発生予測が前日から報道されていたにも関わらず、当日「大雨警報・線状降水帯発生」が発令された時点でさえ職員は待機状態になく、警報発令から相当な時間が経過した頃にようやく体制が整った状態でありました。
よって、職員の先の先を見据えた対応能力の育成と危機管理体制の確保をお願いしたいものであります。
(5)仁保津川合流点付近の加工
令和3年3月に市道(茶屋川樋門から北側)の嵩上げを実施したにもかかわらず、茶屋川・仁保津川から氾濫し効果の期待に至らず、一昨年の要望書の四番目に掲げた項目について、昨年、市の対策として土嚢による加工を施されましたが、昨年の豪雨では効果が見られませんでした。
従って、上記部分の加工をお願いしたいものであります。
(6)茶屋川樋門西側市道の変更(既に口頭要望済の案件)
現在、ハイドロポンプ設置にあたり、茶屋川樋門西側の市道を片側車線交通規制を行っている状況であります。
茶屋川樋門西側に既存する橋部分から茶屋川樋門に向かって斜めに市道を変更すること及び橋の南側の縁石を撤去することにより、ポンプ車数台が設置可能なスペースが確保され、ポンプ車の設置から排水開始までの時短に繋がるものと考えられるところであります。
また、ポンプ車設置後の片側車線交通規制も不要になると同時に通常時における車両離合にも余裕が生まれると考えられるところであります。
(7)河川監視カメラの設置
氾濫頻度の確率の高い茶屋川及び仁保津川合流地点である茶屋川樋門付近における河川状況を監視するためのものであります。
現状では、集中豪雨の最中に、既存の簡易水位計と実際の水位状況の誤差を確認するために河川直近に出向くといった自らを危険に晒している状況であります。
従って、簡易水位計の様な誤差が大きいものでない、リアルタイム映像を配信出来る高性能・高画質な監視カメラの設置をお願いするものであります。
(8)茶屋川樋門の建替え
茶屋川樋門は、設置されて41余年が経過している状況であります。
昨年、茶屋川樋門の故障が発覚し、口頭にて樋門の修理等の予算を自動排水ポンプへの建替えに充てることを要望したところ、フラップゲートの更新及びローラーゲートの補修のみが行われたところであります。
そこで、上記に記載の「自動排水ポンプ・高精度水位計・高画質監視カメラが一体となった樋門」の建設をお願いするものであります。
(1)自動排水ポンプの設置について
小郡樫の前地区におきましては、県管理河川における自然災害対策の強化として、「樋門及び自動排水ポンプの整備」を令和6年11月及び令和7年7月に県に要望いたしたところでございます。
市といたしましては、引き続き、自動排水ポンプの整備を県に要望してまいりますとともに、大雨時における内水氾濫対策といたしまして、通常の仮設ポンプの約4倍の排水能力を有するハイドロポンプ等による緊急排水を実施し、浸水被害の軽減に努めてまいりたいと考えております。
(2)茶屋川樋門以西及び以北の整備について
管理者であります山口県防府土木建築事務所に確認しましたところ、「要望書のとおり、2箇年にわたり椹野川と並行している河川の浚渫及び流下能力に支障となる伐採をおこなっており、その他の浚渫及び伐採については、今後状況を注視し必要に応じて対応してまいる。」とのことでございます。
市といたしましては、現場状況を注視し、状況に応じた必要な対策を講じていただきますよう、県に対し要望してまいりたいと考えております。
(3)簡易水位計数値への早期対応と連携強化の徹底について
山口県土木防災情報システムにおける河川水位データと実際の水位との誤差について管理者であります県河川課へ確認したところ、水位データは10分毎となっており、システムの性質上、数分間程度のタイムラグは発生するということでございました。
また、本年度の豪雨時に一時的に観測データが表示されていなかったことにつきましては、当該施設の観測開始水位の設定が0.50mからとなっており、設定水位を下回った時間帯がシステムに反映されていないことが考えられるとのことでございました。
市といたしましては、簡易水位計の観測開始水位の設定変更等につきまして、県河川課と調整してまいりたいと考えております。
次に、樫の前地区の大雨時の対応につきましては、昨年度からハイドロポンプを配備するなど、内水氾濫対策の強化を図ってきたところでございます。また、令和6年7月の大雨の時には、他の地区で待機中であった排水ポンプ車を緊急的に配備するなど、地区ごとの状況に応じた効率的、効果的な対応に努めてきたところでございます。
加えて、本年度、樫の前地区につきましては、茶屋川水系の上流域にあります農業用ため池を雨水調整池として活用する雨水の流出抑制対策を、関係者の皆様の御理解と御協力のもと新たに実施したところでございます。
この対策につきましては、昨年7月1日の大雨時は氾濫危険水位(茶屋川)を超え道路冠水が発生したことに対しまして、本年8月10日の大雨時は、昨年7月1日の大雨より時間最大雨量や累加雨量が多かったにもかかわらず、氾濫危険水位に達しなかったことからも、一定の効果があったものと考えているところでございます。
本市といたしましては、今後もこのような内水氾濫対策を講じることにより、樫の前地区の浸水被害の軽減に努めてまいりたいと考えております。
(4)職員の育成と危機管理体制の確立について
本市では、職員の配備が必要となる警戒体制の参集基準を定めておりまして、河川の水位が水防団待機水位を超過した場合や大雨等の気象警報が発表された場合において、配備部署の職員が各職場に参集し、災害等の発生に備えているところでございます。
また、危機管理体制といたしましては、平常時から関係機関と連携を図り、気象・雨量・水位情報等を収集するとともに、天候等の悪化及び災害の発生が予測される場合においては、円滑な体制移行ができるように情報伝達ツールを活用して事前情報の共有を図っているところでございます。
今年の線状降水帯の発生予測がありました8月9日(土)から10日(日)の市の体制等につきましては、先ず、7日(木)の段階から最新の気象情報について、関係職員をはじめポンプ排水を行う事業者の方とも共有したところでございます。
また、9日(土)の大雨警報が発表された際は、各配備部署において職員の配備を速やかに行ったところであり、緊急排水の現場体制につきましても事業者と調整を図りまして、当日中には完了したところでございます。
今後も、職員全員が危機管理意識を高めますとともに、迅速かつ、的確な対応が行えますよう、職員の配備体制の整備を図ってまいります。
(5)仁保津川合流点付近の加工について
仁保津川合流部の土のうは、道路等への越流防止対策として暫定的に設置したものでございまして、その後の豪雨時における効果を検証しているところでございます。
これまで大雨時において現地での状況確認や流水の動画撮影を行ってまいりましたが、御指摘のとおり、土のうによる止水壁では大きな効果が見られなかったところでございます。
今後は、(3)で回答いたしました、農業用ため池の有効活用を更に充実させるなど、より効果的な対策を検討してまいりたいと考えております。
(6)茶屋川樋門西側市道の変更について
現状、ハイドロポンプ等での緊急排水作業を実施する場合には、搭載車両を市道敷地に配置していたことから片側通行等の交通規制を伴っておりましたが、緊急排水作業中におきましても車両が安全に通行できるよう、配置場所を河川敷地に変更することについて、河川管理者である県河川課と協議を行っているところでございます。
今後、県との協議が整いましたら、配置スペースの整地工事を実施してまいることといたしております。
(7)河川監視カメラの設置について
茶屋川には降雨時の水位を観測するための簡易水位計が設置されておりますが、(3)で回答いたしましたとおり、水位データが山口県土木防災情報システムに反映されるまでには、数分間程度のタイムラグがあるため、リアルタイムで把握することが難しい状況となっております。
市といたしましては、県のシステムにおいて、現場の状況をリアルタイムで見ることが可能な河川監視カメラの設置を県に要望してまいりますとともに、樫の前地区など浸水被害が発生している地区につきましては、河川・水路の水位や浸水状況等を一早く把握し、避難情報発令の判断材料として活用できるかなどについて、今後、研究してまいりたいと考えております。
(8)茶屋川樋門の建替えについて
管理者であります山口県防府土木建築事務所に確認しましたところ、「現在、フラップゲート2門の巻き上げ機の補修を完了しており、今年度、昇降装置の不具合が生じているローラーゲート1門の補修を行います。要望のポンプ機能が附帯するゲートへの建替えについては、市が管理する河川も茶屋川に合流するため、今後市と協議してまいる。」とのことでございます。
市といたしましては、県から樋門建替えに関する協議の申し入れがあった際には、樫の前地区における浸水被害の状況をしっかりと伝えてまいりたいと考えております。