宗教法人常栄寺所有の絵画が国の重要文化財に指定へ
令和4年11月18日に開催された国の文化審議会は、文部科学大臣に対して、宗教法人常栄寺が所有する「絹本著色雪舟等楊像」及び「絹本著色惟松円融像」を国の重要文化財に指定するよう答申しました。
官報告示を経て正式に指定されると、山口市内の国指定重要文化財(絵画)は8件となります。
概要
(1)絹本著色雪舟等楊像(けんぽんちゃくしょくせっしゅうとうようぞう)〈雲谷等益筆(うんこくとうえきひつ)〉
室町時代の画僧・雪舟の肖像画で、江戸時代初期の萩藩(はぎはん)絵師・雲谷等益(1591~1644)の代表作として知られる。使用印から、等益晩年の作とみられ、等益が次男・等爾(とうじ)(1615~1671)に付与し、等益没後に等爾が大徳寺185世・玉舟宗璠(1600~1668)の賛(さん)を得た可能性が指摘される。雪舟末流として江戸時代を通じ独特の存在感を示し続けた雲谷派にとって、画祖(がそ)・雪舟の肖像画には特別な意味があったはずで、本作はその一端を示す好資料としても高く評価される。(江戸時代・17世紀)
(2)絹本著色惟松円融像(けんぽんちゃくしょくいしょうえんゆうぞう)〈雲谷等顔筆(うんこくとうがんひつ)〉
常栄寺3世・惟松円融(?~1614)の肖像画で、その晩年に弟子の法雲恵藤(ほううんえとう)に与えられたものである。左下の印と様式から、毛利輝元に仕えた雲谷派の祖・雲谷等顔(1547~1618)の作であることも判明する。堂々とした形態把握と気迫を感じさせるやや陰鬱(いんうつ)な表情に、きらびやかな彩色(さいしき)とがあいまって独特な存在感を示す優品で、雪舟風の重厚な墨画で著名な等顔が、着色画においても本格的な技術と個性的な作風を持っていたことを示す代表作として高く評価される。(桃山時代・17世紀)
左:絹本著色雪舟等楊像、右:絹本著色惟松円融像