平成30年4月29日、第23回中原中也賞贈呈式を湯田温泉ユウベルホテル松政で開催しました。詩集『狸の匣(たぬきのはこ)』で受賞されたマーサ・ナカムラさんに、賞状(山口萩焼の陶板)と正賞(中也のブロンズ像)、副賞を贈呈し、多くの来場者から盛大な拍手が送られました。
受賞詩集について、選考委員を務めた詩人の佐々木幹郎氏は、「言葉がわかりやすく面白い。そして、読者を(詩や物語の)向こうの世界へ連れて行くような力を持っている。この詩集にみられる作者の天衣無縫な夢想は天才的である」と選評を述べられました。
市長は、「このたびの受賞作は、民話的な世界を描きながら、ユーモアのある巧みな言葉選びが高く評価された。今後も素晴らしい作品を生み出していかれることを心から期待するとともに、中原中也を生んだここ山口の地を、詩人として新たな一歩を踏み出した場所として心にとどめていただければ、この上ない喜びである」とお祝いの言葉を贈りました。
これを受け、マーサ・ナカムラさんは、「中原中也の詩のように長く世に残って、遠い世界の人を感動させられるような、何かのきっかけを起こさせるような詩を作っていきたい」と詩を書くに至るまでの経緯を交えながら、今後の意気込みを語られました。
贈呈式後は、作家の太田治子氏をお招きし、「中原中也の愛」を演題に記念講演を行い、およそ200人の来場者が熱心に耳を傾けました。太田氏は、中原中也の詩「盲目の秋」を例に挙げ、「中原中也は自己への愛のみならず、他者へも愛を与える人であったのではないか」と述べられました。また、中也と関わりのあった長谷川泰子氏への切ない愛について、中也の一途さ、例えようのない切ない愛の証を魅力あふれる語り口で解説していただきました。
同日、生誕地である中原中也記念館の前庭では、空の下の朗読会やVOICE SPACEによるコンサートが行われ、テノール、チェロ、アイリッシュフルート、ピアノそれぞれが織りなすハーモニーや世界観に、会場を訪れた多くの人々が魅了されていました。
市では、今後も、多くの皆さんにさまざまな文化や芸術等に親しんでいただけるよう努めてまいります。
正賞の中也のブロンズ像を手渡す市長(左)と受賞者のマーサ・ナカムラさん(右)
受賞詩集「狸の匣(たぬきのはこ)」
文化交流課 Tel 083-934-2717